一章 発現

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「な、なんでここに……? 」 驚きのあまり声が震え、指が独りでに口元を押さえた。 「こんな夜に私から逃げ出そうなんて甘いよ 」豆丘と名乗った少女はにんまりと笑い、こちらを見据える。 その眼は人であれば、本来あるはずの白目がなく、黒目以外の部分が橙色へと変色していた。 「……え? あぁごめんごめん、目気になるよね」俺は気がつかない内に彼女の目を見つめていたようだった。 彼女は少し恥ずかしそうにすると、パチパチと瞬きをする。と少しだけ色素の薄い、人らしいブラウンの瞳が現れた。 「あ、いや、俺の方こそ悪い」 「良いよ良いよ。あ、でも悪いと思ってるなら中入れてよ。どうせ家も分かっちゃったし」 「……無理って言ったらどうする? 」 「窓ガラス割ってでも入り込む」 「よし、中に入ったら静かに頼むよ」 こうなったら腹を括る事にした。……ガラス割られるのは勘弁だし。 俺は窓を開け先に入り、窓外で待機している豆丘さんに部屋に入るように手招きをする。 豆丘さんはおずおずと部屋に入ると、キョロキョロと部屋を見渡す。 「……どうかした? 」部屋をまじまじと見られるのはなんとなく落ち着かなかった。 ……特に散らかってはいないよな? 机に本棚布団にゲーム機と後多少の服……、部屋に置いてあるものも変なものはない。 ……というか女の子が部屋に来たの初めてだな。 「いやいや、男の子の部屋ってこんな感じなんだなって」彼女はひとしきり見終わったのか落ち着き、ぺたんと座りこむ。 「あー今日は疲れたぁ」豆丘さんははぁとため息をつく。本当に疲れていたのだろう。 「……にしてもなんでまた家出なん」てしたのか、と言いかけたとき、ぐぅと腹の音が鳴る。 俺ではない。 ……まあここには俺と豆丘さんしかいないわけで。 そうなれば自ずと誰が音の出所か分かるわけで。 豆丘さんの様子を見ると、頬を染め恥ずかしそうにうつむいていた。 「……あー、なんか食べる? 」 こんな時に女の子に対する気の効いたフォローなんて、俺に出来る筈もなく端的に提案をする。 「……朝からなにも食べてなくて……、ごめんね」 「台所見てくる。適当になんかしてて」 扉の方へ向かい、静かにドアノブを開ける。 そのまま足音を立てないように気を付けながら、1階の台所へと向かった。
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