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俺は台所まで行くと、まず炊飯ジャーを開いた。
保温状態でそのまま食べられそうだ。
(あとはおかずだな)と近くの冷蔵庫を開ける。中には、夕飯の残り物、青椒肉絲がラップされて入っていた。
それを手に取り、電子レンジで加熱する。
そしてコンロに置かれていた手鍋に入っている卵スープを暖めながら、壁掛け時計を見る。
短針が三の数字を指していた。
(あーもう3時か。そろそろ寝ないと明日キツいな)時間を確認したばっかりになんとも言えない倦怠感が体を襲う。
ぐぐっと体を伸ばし軽くストレッチをしていると、突然リビングのドアが開く。
「なにしてんの? 」と聞きなれた声の主、すなわち俺の母さん――真九呑地 葉羽――は寝ぼけ眼をこちらに向ける。
「い、いや夜食にでもと思って。……もしかして起こした? だとしたらごめん」
(いつも起きないのになんでこう間の悪い……)
突然の登場に俺は驚くが、出来るだけ平静を保つように心掛ける。
「んーん、喉乾いたから起きただけ」ふわぁと欠伸をしながら冷蔵庫の方へ向かい、お茶を取り出すと小さいコップに入れる。
それを一息に飲み干すと、「こんな時間まで起きてたら明日辛いよ」と俺に忠告して、おやすみと言いながらリビングへと戻っていった。
いや正確にはそのリビングを挟んだ奥にある寝室にだ。
そうして台所はまた静けさが取り戻された。
母さんと話している間にレンジは仕事を終わらせていたようだ。
そのまま俺はスープを見に行き、程よく暖まっているのを確認する。
火を止め、白飯、青椒肉絲、卵スープと器に装い盆に載せる。
魔法の手で盆を浮かせながら、俺は二階へと戻る事にした。
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