一章 発現

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俺は台所まで行くと、まず炊飯ジャーを開いた。 保温状態でそのまま食べられそうだ。 (あとはおかずだな)と近くの冷蔵庫を開ける。中には、夕飯の残り物、青椒肉絲がラップされて入っていた。 それを手に取り、電子レンジで加熱する。 そしてコンロに置かれていた手鍋に入っている卵スープを暖めながら、壁掛け時計を見る。 短針が三の数字を指していた。 (あーもう3時か。そろそろ寝ないと明日キツいな)時間を確認したばっかりになんとも言えない倦怠感が体を襲う。 ぐぐっと体を伸ばし軽くストレッチをしていると、突然リビングのドアが開く。 「なにしてんの? 」と聞きなれた声の主、すなわち俺の母さん――真九呑地 葉羽(マクノミチ ヨウハ)――は寝ぼけ眼をこちらに向ける。 「い、いや夜食にでもと思って。……もしかして起こした? だとしたらごめん」 (いつも起きないのになんでこう間の悪い……) 突然の登場に俺は驚くが、出来るだけ平静を保つように心掛ける。 「んーん、喉乾いたから起きただけ」ふわぁと欠伸をしながら冷蔵庫の方へ向かい、お茶を取り出すと小さいコップに入れる。 それを一息に飲み干すと、「こんな時間まで起きてたら明日辛いよ」と俺に忠告して、おやすみと言いながらリビングへと戻っていった。 いや正確にはそのリビングを挟んだ奥にある寝室にだ。 そうして台所はまた静けさが取り戻された。 母さんと話している間にレンジは仕事を終わらせていたようだ。 そのまま俺はスープを見に行き、程よく暖まっているのを確認する。 火を止め、白飯、青椒肉絲、卵スープと器に装い盆に載せる。 魔法の手(マジックハンド)で盆を浮かせながら、俺は二階へと戻る事にした。
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