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ドアノブを捻り中に入ると豆丘さんは机に座り、漫画とにらめっこしていた。
「とりあえず持ってきたよ」
俺がそう言うと此方を振り返り「ごめんね、ありがとう」と漫画を閉じ、盆を取りに来る。
「あ、それが刃君の超能力? 」
と盆を持たせている2つの手首を不思議そうに見る。
「……まあそんなところだよ」
(やっぱ2つとかってなると見えるのか。外じゃ使えるのは1つだけだな)
「んー、さっきは3つあったように見えたけど……」
そう言いながら盆を取ると机に置き、備え付きの椅子に座った。
そして「あの……頂いてもいい? 」こちらを恐る恐る見ながら彼女は訪ねる。
「どうぞ」
「頂きます」と豆丘さんは手を軽く合わせ、青椒肉絲を口に運んだ。
猛禽類の足を思わせる尖った指で器用に箸を持ち、もぐもぐと口を動かしている様子を、俺がぼんやりと眺めていると、ごくりと飲み込み「これ、凄く美味しいね」豆丘さんは此方をキラキラとした眼で見てきた。
その視線でなんとなく気恥ずかしくなって、「ふ……普通だよ普通」と顔を背ける。
「私の食べてた物と違って食感も良いし、味もしっかりしてる」本当にお気に召したようで箸が休むことなく、盆の上をせわしなく動いていた。
「……いつもなに食べてたの? 」
「なんか良く分かんない、パサパサしたブロックみたいなのと水とかだったよ」
「……へぇ」
なんか少なくとも、まともな人間と暮らしてたわけじゃないみたいだな。
豆丘さんは一体どこから逃げ出してきたんだ……?
「御馳走様でした」彼女が静かに手を合わせ、呟く。
皿の中身は綺麗さっぱり無くなっていた。
「食べ終わった? 」敷き布団を敷きながら彼は言う。
「うん。本当にありがとう」
「良いよ気にしなくて」欠伸をしながら枕を布団の頭元にぽふっと放り、机の方へと向く。
「盆片付けてくるから先寝てて良いよ」
そして親指を敷いた布団へ指差した。
「……もしかしてい、一緒に寝るの? 」顔を赤らめながら彼をちらちらと見る。
ぶふっと吹き出し「ち、違う違う! 」手を左右にと振り否定する。
「……で、でもそうしないと寝れないよ? 」
「いやいや、ほら俺は椅子にでも座って寝るから、気にしないで良いって」
「じ、じゃあ私が椅子に座って寝るよ」
「いいからいいから」と彼女を布団の縁に座らせ、「じゃあおやすみ」と盆を持ち、彼は下へ降りていった。
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