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いけない、ぼーっとしてた。あの日のことをつい、感傷深く思い出してしまった。
そう、今日はその初恋の人に告白する。一年片想いして、二年生になった今も宙斗くんとは同じクラスだ。
視線を向ければ、彼はまた廊下側の一番前の席で本を読んでいる。
あー……ややうしろアングルからの真剣な横顔! 半端ない、カッコよすぎて鼻血出そう。
「俺を無視して、男観察とはどういう了見だ」
「あ、忘れてたゴメン」
楓の存在を完全にシャットアウトしてたなぁ。もう、宙斗くんしか見えない!
「うんうん、恋って盲目だよね!」
「恋愛経験〇のお前が言うな」
楓が半目で私を見る。
そんな、心底呆れたみたいな顔しなくても。
「とにかく美容師さん」
「勝手に美容師にすんなし」
楓の些細な文句はさらりと流して、私は親指を立ててるとグットのサインを出す。
「とびっきり可愛くお願いしますね。あなたの腕に、私の未来がかかってますから」
「人任せかよ!」
楓の顔に、さらなる呆れが浮かんだ。
放課後、私はそそくさと帰ろうとしていた宙斗くんを引き留めて、学校の中庭に呼び出した。この時間は生徒たちが帰宅もしくは部活に行ってしまうので、中庭に人気はない。
「それで、なんの用だ?」
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