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「全然、よくないじゃん!」
他に好きな人がいるならまだしも、まさか女嫌いの壁に恋を阻まれるとは思ってもみなかった。
「ちょっと待って、じゃあ宙斗くんは女の子が苦手なだけ? それとも恋愛対象が男――」
「それはないから安心しろ」
食い気味に答える宙斗くんに、私は瞬きを繰り返す。
「そ、そう……でも宙斗くんモテるから、こうして呼び出しされたり、取り巻きだっているでしょ? その、大丈夫なの?」
――って、呼び出した私が言うのもアレだけど。
毎日、彼の周りには女の子たちがいる。そのクールな雰囲気に近寄る勇気まではないみたいだけど、一定の距離で囲っているのだ。
「大丈夫じゃないから、取り巻きは全部じゃがいもだと思ってる」
遠い目をした宙斗くんは、悟りを開いた僧侶のように言った。それだけで、宙斗くんの苦労が窺える。
「じゃ、じゃがいも?」
「告白される危険を察知したら、速攻で早退するかして逃げる」
察知って、宙斗くんにはレーダーでもついてるのかい。そこまで来ると、相当女嫌いを拗らせてるなぁ。
「でも、今日は私に捕まっちゃってるけど?」
「お前に対してだけ、レーダーが働かなかった」
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