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「でも、宙斗くんはそれでいいの?」
「あくまで偽装だ。お前ひとりと大勢の女を相手にするのとを比較したら、ひとりの方が断然負担が少ない」
ああ、人数の問題ね。
思わず、はははっと乾いた笑みがこぼれてしまった。
「でも、恋人のフリするんだよ?」
フリでもきみの恋人になれてうれしい……なんて、本当に私ってバカだな。
「彼氏って言いふらすだけでいいだろ。いくらニセの彼女でも、半径一メートル以内に立ち入り禁止だ」
「甘いなー、宙斗くんは。それごときで、きみのファンが黙ってると思う?」
絶対に疑って、私たちの仲を確かめにくるに違いない。そんなときに手も繋げない、半径一メートル以内に近づけないとなると、偽装ですってもろバレる。
「じゃあ、どうしろって言うんだよ。言っとくが、今こうして言葉を交わしていることすら俺は限界なんだぞ」
ええ、それは悲鳴を上げられた段階で察してますから。あんな醜態を学校で晒させるわけにもいかない。学校での宙斗くんの立場がなくなってしまうのはかわいそうなので、私は髪のリボンをスルリと解いた。
「お前、なにして……」
ふわりと私のブラウンの髪が解ける様を宙斗くんは驚いたように見つめていた。
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