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①クール王子の彼女(仮)になります。
盛大にフラれるあの瞬間から、時を遡ること三時間半ほど前。教室には食欲を誘うお弁当の匂いが立ち込めているのだが、私はご飯も食べずに机に置いた卓上ミラーをのぞき込んでいる。
「うーん、まだ分け目が変な気がするんだよね」
私は念入りに前髪を指先で整えては、ワックスでセットする。すると隣から「はぁっ」と呆れるようなため息が聞こえた。
「それ、ワックスつけすぎ。前髪ところどころ固まってんじゃん」
そう声をかけてきたのは、麻生楓(あそう かえで)。
私と同じ高校二年生で、この学年では誰もが知るチャラ男だ。彼は目を引く金髪で、右耳には赤い女モノのピアスをつけている。
「いいのよ、恋は準備の段階も楽しむものなんだから」
「全然楽しくないよ、美代!むしろ緊張のあまり吐きそう……」
大人の余裕をかもし出す、この黒髪美人は宮原美代(みやはら みよ)。吹奏楽でフルートを吹く清楚そうなイメージからは程遠い、年上キラーだ。ちなみに、今の恋のお相手は担任の東堂先生らしい。
とはいっても、彼氏は週替わりで付き合うのが彼女のスタイルらしく、月曜日の欠員が出たから先生を狙ってるんだとか。
「なんてプレイガールなんだ……」
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