②きみの心に近づきたくて

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 隣に並んだ長身の楓を見上げて、キッと睨む。朝の居心地の悪い視線に苛立っていたので、半分は八つ当たりだ。 「ま、うまくいってよかったじゃん」 「うっ」  楓に背中をバシッと叩かれて、うめき声が出た。  “力加減してよね、バカ力”という喉まで出かかった文句は、結局言葉にならなかった。 「うん、ありがとう」  どこから偽装カップルのことがバレるかわからないので、親友のふたりには本当のことを話してない。スマートフォンのメッセージアプリで【OKもらえました】というメッセージだけを送って報告をした。  つまり、うしろめたさがあるせいか怒れない。 「なんだよ、お前のことだから超うれしい~って、叫ぶと思ったのに」  “超うれしい”のところだけ裏声なのは、私の声真似? 全然似てないけど、さすがは親友。私の様子がおかしいことに目ざとく気づく。 「あはは、これでも小躍りしたいくらいにはウレシイヨ」  感情がこもってない、棒読みじゃん、私!   でも、そんなこと言っても仕方ないじゃないか。私だってさ、純粋に告白が受理されたなら両手を上げて喜んでたよ。けど今は〝偽装〟という言葉が心に引っかかってる。うれしさ半分、虚しさ半分ってところだ。  初っ端から楓に怪しまれてるようじゃ、美代になんて速攻バレそう。     
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