②きみの心に近づきたくて

3/16
前へ
/180ページ
次へ
 美代はなにかと女の勘が働く。たとえば、クラスメートの誰に彼女だできたとか、自分の彼氏の浮気とかを瞬時に察知する能力がある。  美代エスパーを前にして、私はどこまで嘘をつき通せるのか……。もうすでに自信がない。もっとうまくごまかさないと、すぐに見抜かれてしまうだろう。  内心ヒヤヒヤしながら、私は意を決して楓と教室に入った。その瞬間、目の前が陰った。 「はや――飛鳥」 「わあっ!」  教室の入り口を塞ぐように仁王立ちするのは、真っ青な顔をした宙斗くんだ。 「えっ、宙斗くん!?」  どうして、そんな今にも死にそうな顔してるの?  目を丸くしていると、宙斗くんのうしろから「彼女ができたってどういうこと!?」「私たちの王子様がぁーっ」という混乱と悲鳴が巻き起こっている。  ああ、宙斗くん。質問攻めにあったんだな。  私も当事者なのに、どこか他人事のように気の毒になった。 「飛鳥」  名前を呼ばれて、トクンッと心臓が跳ねる。  ドキドキしてる場合じゃないのに、私……。やっぱり宙斗くんに名前を呼ばれるの、好きだな。もう少しだけ、この幸せの余韻に浸っていたいところだけど、宙斗くんが〝早く助けて〟って顔をしてるからなんとかしてあげないと。 「見ての通り、〝私の彼氏〟が体調悪そうなので、保健室に送ってきまーす!」     
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加