②きみの心に近づきたくて

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 授業中でも、みんなの好奇の視線が飛んでくる。いつも授業に真剣に参加してるわけじゃないけど、集中できない。 「はぁ……」  教科書で顔を隠し、思わずため息をついた。すると隣の席に座る楓が、ちらりとこちらを見る。 「生きてるかー?」  小声でそう声をかけてきた。  私は両手を合わせて目を閉じ、天に召されたジェスチャーで返す。 「ぶっ」  吹きだした楓をジトリと睨み、口パクで〝笑うな〟と伝えた。楓といがみ合っていると、今度は私の前の席に座る美代が先生の目を盗んで振り返る。  美代、どうしたの?  そう目で訴えかけると、スッとりんごの形をしたメモ用紙を私の机の上に置く。もう一度どうしたのかと聞こうと思ったのだが、美代は前を向いてしまった。  なになに……?  メモ用紙を手に、文面に目を走らせる。そこには【ふたり、付き合ってないでしょ】と書かれていた。 ……え、ええっ!?  口をパクパクさせながら、私は目の前の物言わぬ背中を穴が開くほど見つめる。 「なっ、なんでわかったの!?」  ガタンッと席を立ちあがり、叫ぶ私。あっ……と、気づいたときには遅かった。 「おーい早見、今はなんの時間だー?」 「はい、今は東堂先生の貴重な数学のご講義の時間です! すいませんでしたっ」  もう、私ってば焦りすぎっ。     
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