②きみの心に近づきたくて

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 ああ、呼べなかったんだ、女の子の名前だから。  事情を知っている私が、密かに苦笑いを浮かべていると……。 「彼女以外の名前は、苗字で呼ぶことにしてるから」 「ええっ」  脳天に鉄拳が落ちてきたような衝撃。宙斗くんから突然の彼女扱いに、驚きの声を上げてしまう。  もちろんこれは、女子を名前で呼びたくないからだってわかってる。宙斗くんは偽装カップルを利用して、厄――女子を遠ざけようとしただけだ。喜んじゃ、駄目なんだよね。  悶々としていると、楓が顔をのぞき込んでくる。 「飛鳥がなんで驚くんだよ」 「え、おおおおおっ、驚いてないよ!」 「つうか、動揺してね?」 「してない!」  バシッと目の前の楓の頭を引っぱたく。  あ、動揺のあまり手が出ちゃった。 「いってぇーなっ、こんな暴力女でいいわけ? 宙斗」  頭をさすりながらニヤッとからかうように言う楓。お願いだから、余計なことを言わないでほしい。いつ宙斗くんの気分が変わってしまうか、わからないんだから。 「いや、無理――」 「わーっ! 大好きだよね、私のこと!」  今、絶対無理って言おうとしたでしょ!  とりあえず叫んでごまかしたけど、楓も美代も疑惑の目でこちらを見てくる。 「ねぇ、宙斗くん。飛鳥のどこが好きなの?」     
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