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「……好きなんだよ、こういうの」
「へぇ~」
「驚かないのか?」
「ええぇぇぇっ!」
「時差あんのかよ!」
顔を真っ赤にして怒る彼に、私は開いた口が塞がらない。宙斗くんはアレか、いわゆる乙男というやつなのか? ともかく、またひとつ彼の秘密を知ってしまった。
「まさか、宙斗くんがこのウサギちゃんに惹かれてるとは」
「悪いかよ」
ふてくされたのか、宙斗くんはうさぎとクマを棚に戻すと、私に背を向けて店を出て行こうとする。
「あ、待ってよー!」
私もすぐに追いかけようとして、足を止める。
宙斗くん、このキーホルダー買おうとしてたんじゃないかな。だけど、私が茶々を入れたりしたから……。
私は申し訳なくなって悩んだあげく、ウサギとクマのキーホルダーを献上品にして謝ることを決めた。レジに並んでふたつのキーホルダーを購入し、私は慌てて彼のうしろを追いかける。
「宙斗くーん!」
会いたい人の背中を人ごみの中に見つけて、私は声をかける。お店を出たら彼の姿がどこにもなかったので、いちかばちかで駅のほうへ歩いてきたのだけれど、正解だったみたいだ。
「やっと追いついた!」
声をかけても一度も振り返ってはくれなかったので、私は無理やり彼の隣に並ぶ。
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