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「なんで追いかけてくるんだよ」
眉間に深い皺を刻む彼に、私は怯むことなくケロッとして答えた。
「会って話したいことがあったから」
「話したいこと?」
「ここじゃなんだから、公園に行こう!」
私がリボンをほどいて差し出すと、宙斗くんは自然とそれを握った。
あ……そういえば、ここに同じ学校の人の目はないんだし、わざわざリボン越しに手を繋ぐこともなかったな。でもなぜか、私たちはそれが当たり前みたいに行動していた。
いつか、この行為が癖になればいいな。それだけ、きみが私を怖がらずにいてくれるんだって安心できるから。
リボンを見つめながら、そんなことを考えていると――。
「おい、なに笑ってんだよ」
「え、私……笑ってた?」
「ガッツリな」
そっか、私……笑ってたんだ。きみとの距離が少しは近づいたかもって思ったら、うれしくて仕方なかったんだよ。そう言ったら、きみは私から逃げ出しちゃうかな。
「おい、行かないのか?」
「あ、うんっ、行く! 行かせていただきます!」
掴んだ紐が突っ張る感覚。それに小さな幸せを感じながら、私は宙斗くんと駅前にある噴水広場へと向かった。
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