④初めて手を繋いだ日

5/26
前へ
/180ページ
次へ
 この数日で彼と目が合う回数も増えたし、こうして隣に座ってくれるようにもなった。初めは壁に張りつくほど避けられていたから、彼の進歩に泣けてくる。 「ほら、出来たぞ」  自慢げに見せられたメモ帳を「どれどれ」と、のぞき込む。そこに書かれていたのは【偽装カップル証明計画書。その一、偽装デート】という、ラブラブとはほど遠い事務的な作戦名ならぬ計画名だった。 「信じられない……。きみにセンスどうこう言う権利はありません!」  私は彼からメモ帳をひったくると、それでクール王子の頭を叩く。  彼は「痛っ」と言って頭をさすると、私を恨めしそうに睨んだ。 「なんだよ、なにが不満だ」 「宙斗くん、本気でデートする気あるの?」 「本気はない、隠すために努力はする」  この男は……なんて人だ。私はきみのことが好きなのに、平然と私を好きじゃないという証拠を突きつけてくる。私が傷ついてることなんて、きっと知らないんだろうな。 「宙斗くんのバカ……」 「はぁ?」 「とにかく、デートプランを宙斗くんが考えると大変なことになりそうだから、私が考えるね」 「どういう意味だよ」  ──そのままの意味だよ!     
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加