①クール王子の彼女(仮)になります。

6/19
前へ
/180ページ
次へ
 落ち込みながら、今はトボトボと教室を目指して廊下を歩いている。荷物が教室に置いてあるからだ。 「どうして、あのとき怒れなかったんだろう」  本当はなんてことしてくれたんだって、怒りたかった。愛着があったぶん喪失感も大きくて、今だって見つからなくて泣きそうだった。 「っ……もう、最悪っ」  周りに気を遣って、文句のひとつ言えなくて。この胸のモヤモヤは、どこの誰にぶつければいいんだろう。  なんだか悔しくて、じわりと目に涙が滲んだ。いよいよ泣くな、と思ったところで教室の入り口にたどりつく。茜色に染まる教室の中には帰宅したか、部活に行ったかで、生徒がひとりだけしか残っていなかった。  あれって……。  そこにいたのは、高杉くんだった。そして信じられないことに、彼は私の机をじっと見つめていたる。  え、なんで!? 人の机を見つめて、なにをしてらっしゃるのでしょうか!  噂のイケメンが、私の机をガン見するという謎の場面への遭遇。彼の前に出ていくのも、なんか気まずい。普段、初対面の人でもグイグイ声をかけられる私だが、今回ばかりはなぜか躊躇してしまった。  なんでかな、見てはいけないものを見てしまった気持ち?  私はなんとなく扉の裏に隠れて、彼を盗み見ることにした。 「荷物があるってことは、まだ帰ってないのか?」     
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加