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落ち込みながら、今はトボトボと教室を目指して廊下を歩いている。荷物が教室に置いてあるからだ。
「どうして、あのとき怒れなかったんだろう」
本当はなんてことしてくれたんだって、怒りたかった。愛着があったぶん喪失感も大きくて、今だって見つからなくて泣きそうだった。
「っ……もう、最悪っ」
周りに気を遣って、文句のひとつ言えなくて。この胸のモヤモヤは、どこの誰にぶつければいいんだろう。
なんだか悔しくて、じわりと目に涙が滲んだ。いよいよ泣くな、と思ったところで教室の入り口にたどりつく。茜色に染まる教室の中には帰宅したか、部活に行ったかで、生徒がひとりだけしか残っていなかった。
あれって……。
そこにいたのは、高杉くんだった。そして信じられないことに、彼は私の机をじっと見つめていたる。
え、なんで!? 人の机を見つめて、なにをしてらっしゃるのでしょうか!
噂のイケメンが、私の机をガン見するという謎の場面への遭遇。彼の前に出ていくのも、なんか気まずい。普段、初対面の人でもグイグイ声をかけられる私だが、今回ばかりはなぜか躊躇してしまった。
なんでかな、見てはいけないものを見てしまった気持ち?
私はなんとなく扉の裏に隠れて、彼を盗み見ることにした。
「荷物があるってことは、まだ帰ってないのか?」
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