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2話 寝た振り
【芦原秋季&小野寺瑞月】
パタパタパタ
誰かが廊下を駆けて来る。
高校生になってまだ間もない俺は、クラスの人とあまり話せていない。
クラスの人だったらどうしよう......
そう不安になってきて、思わず寝た振りをしてしまった。
ガラガラ
ドアが開き、誰かが教室に入って来た。
「......芦原、くん?」
どうやら女子のようだ。
それだけいうと、忘れ物でもあったのかガタガタと音がする。
しばらく経って、音が止み、足音がこっちに向かってくる。
なぜ、こっちへ来る!?
俺は焦りまくっていた。
「芦原くん?大丈夫?もうすぐ学校しまっちゃうよ?」
確か、もうすぐ生徒は完全下校の時間だ。
「芦原くん?......疲れてるのかな」
一向に俺の前から立ち去ろうとしない。
それどころか前の席の椅子をひいて腰掛ける気配がした。
そもそも誰だ?
名前と顔がまだ一致していないのに、声だけで分かるはずもない。
とりあえず早く帰ってくれ!
「芦原くーん!」
耳元で名前を呼ばれ、体が反応してしまう。が、まだ気づいていないようだ。
「芦原くん、芦原くん」
とうとう、体を揺すられ始めた。
これは、起きなくては。と思って、思い切って顔を上げる。
ふにっ
えっ?──
勢い良く上げた俺の唇に柔らかいものが当たる。
俺の顔を覗き込んでいた女子と目が合い、顔が赤く染まっていくのが見えた。
一瞬何が起きたか分からなかったが、真っ赤になっている女子を見て悟ってしまった。
俺は、やってしまった──
最初から寝た振りなんて馬鹿なことしなければ......
「ごめんなさい!」
と、高速で謝って教室を出で行く。
心臓がドクドク脈を打っている。
顔が熱い。
相手の子の顔が頭から離れない──
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