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「まぁ……それ以上の事が何もなきゃいいけど」
そう私が呟いた後、車内に沈黙が流れる。
私はすぐに、この違和感に気づき息を呑んだ。
「まさか……、ヤったの?」
相坂君はその言葉の意味をすぐに理解して小さく頷く。
「ち、違うんです。僕は、告白して、フラれてそれで終わりだと思ったんです。でも……駿ヶ崎さんからっ……あの、誘われて」
聞きたくなかった。
そうか、そうきたか。
それを聞いた途端、私はまるで漫画の一コマのようにわかりやすく額に手を当てて大きな溜息をついた。
「駿ヶ崎さんが……僕の服を脱がして……それで、だって、好きな人にそんな事されたら、俺だってそうなっちゃうじゃないですか!」
赤裸々に語られる行動に耳を塞ぎたくなったが、もう聞いてしまったら最後、今更拒否する事も出来ず私はそのまま相坂君の話に耳を傾ける。
相坂君の口から言葉が出る度に勝手に私の脳内で映像化されていく。
話が終わる頃には私のライフはゼロだった。
なんでこうなった?
何故そうした?
私達の事は考えなかったのか?
黙ってれば何やってもいいのか?
そんな事ばかりが私の中でぐるぐる回る。
「そうなんだ……いや、うん。わかった」
この日を境に私の目に映る景色はガラリと変わった。
それと同時にこの恋の歯車はガチガチと音を立てて回転を始め、そして人を変えていく。
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