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日が経つにつれて、相坂君は虚ろな目をしている事が多くなった。
どこか焦点が合っていなく、ボーッとしている。
私は職場でしか会うことが無くなった為、それくらいの変化にしか気付けなかった。
「僕は、もうやめようって言ってるんです。こんな関係もう続けられないからって。でも、駿ヶ崎さんは嫌だって言うんです。なのに彼氏とも別れてくれない」
未だに相坂君はわけのわからないまま、駿ヶ崎さんとの関係を続けていた。
ある日、駿ヶ崎さんがこんな事を言ってきた。
「相坂君、自傷癖があるんです。すごく情緒不安定で自分の頭を思い切り掻き毟ったり、腕をずっと引っ掻いたり……」
衝撃的だった。
まさかそこまで深刻な問題になっているとは。
相坂君は見えない未来に怯え続けて不安になっている。
と同時に駿ヶ崎さんは相坂君の変化に僅かながら恐怖心を抱き始めていた。
ここから事態は一気に進展する。
相坂君は話さなかったが駿ヶ崎さんからはこういった話を色々と聞いていた。
たまに焦点が合わない
独り言のような事を言い始める
自傷癖
突然乱暴な言葉遣いになる、など。
正直、私自身はその話を聞いてもピンとこなかった。
職場で会う相坂君はいつも落ち着いていて、ただの好青年だったから。
しかしやがて相坂君は仕事をしていても一切喋らなくなった。
いつも何かに怯えた瞳をするようになった。
どうやら仕事中に駿ヶ崎さんに怒られるのが怖かったようだった。
駿ヶ崎さんは仕事に厳しく、時に八つ当たりのような怒り方をすることもある。
仕事では絞られ、プライベートでは優しくされ中途半端な関係が続く。
それは確実に相坂君を追い詰めていった。
そして、相坂君は仕事を辞めた。
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