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第一章 事の始まり
「え?」
「七瀬さん、何か知っていますか。相坂(あいさか)君から何か相談とか受けてましたか?」
当時私が働いていたダーツバーのカウンター越しに言われた店長からの言葉。
私は何の事なのか、すぐにわかった。
「えーと……あー、何か言われましたか?」
「相坂君に、好きだと告白されました」
そう話してきたのは私より一つ年下で、店長という立場にあった駿ヶ崎(するがさき)さんだ。
駿ヶ崎さんとは働き始めた当初は会話さえしなかったものの唯一の同性という事もあって私達が仲良くなるのにそれ程時間はかからなかった。
女性二人だと普段から恋愛話は当たり前で付き合っている彼氏の話やお客さんの噂など話のネタはざらにあった。
そんな折、駿ヶ崎さんからの突然の告白。
私は一瞬言葉を失った。
と同時に相坂君に対してなんともいえない怒りと悲しみを覚える。
その行為が今後の私達の関係にどのような影響を及ぼすことになるのか、予想ができてしまったからだ。
「それで……?なんて、答えたんですか?」
「彼氏いるの知ってるよね。て言いました」
「まぁ、そうですよね。そうなりますよね」
駿ヶ崎さんには3つ年上の彼氏が居る。
よく2人で彼氏の愚痴を言い合っては「本当、男ってやつは!」
みたいな会話をしながら笑い合うような、そんな仲だった。
いわゆる「女友達」だろうか。
彼氏が居るし、お断りするのが当たり前。
そんな感覚でいた私はこの先起こりうる未来に怯えていた。
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