自覚

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相坂君のカレーはとても凝っているものだった。具はブロックベーコン、玉ねぎ、人参、じゃがいも。 それぞれ圧倒的存在感を放っている。 それに加えてローズマリーの葉?を使い、お米は土鍋で炊いたものだった。 それを4時間かけて煮込んだというのだから大したものだ。 短気な私には到底真似出来ない。 カレーを食べたあとは、いつもダイニングテーブルに座って雑談するのが決まりのようになっていた。 「僕、気づいたら駿ヶ崎さんの事ばっかり話してますね」 不意に相坂君が呟く。 「いやいや……え?今更?」 そんな事、随分前から知ってたっての。 「でも、これはきっと、駿ヶ崎さんとシフトが被ることが多いから、たまたまそうなだけなんです。別に、好きとか……そういうんじゃなくて」 言い訳のように話す相坂君に私は思わず笑ってしまった。 「店長彼氏いるからあんま言わなかったけど、相坂君好きでしょ?店長のこと」 問いかけた私の質問に相坂君は少し考える素振りをして首を傾げる。 「わかんないです……笑顔が可愛いなとか、駿ヶ崎さんだったらなんて言うかな、とか考える事はありますけど。けど、駿ヶ崎さんは彼氏いるし……俺の事なんてなんとも思ってないだろうし……」 独り言のように続けた相坂君は、言葉と一緒にゆっくりと煙草の煙を吐いた。 哀愁漂った表情に私は小さく溜息をつく。 「ねぇ相坂君。なんとも思ってないだろうしって思うのは、逆に言えば「何か思っていてほしい」て事でしょ?それって、その人となんとかなりたいっていう気持ちが無いと出る言葉じゃないと思うんだけど私は」 私がそう言うと、相坂君は切れ長の瞳を丸くして何かに気付いたかのように「あ……」と声を漏らした。 「でもまぁ、彼氏はいるけど、奪うつもりでアプローチしたら、イケるかもよ!ファイトー。」 私は軽い気持ちで背中を押してしまったこの時を後悔している。
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