3.楽園の小鳥

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3.楽園の小鳥

生垣を揺らして、金色の頭がひょっこりと顔を出す。 「ウリエル!」 黒髪のオメガを見つけて、叫んだ。 「――また、来たのですか!」 花が咲き誇る庭園の片隅。 豊かな黒い髪を揺らして振り返ったウリエルは、辺りに人気が無いのを確認すると、困った顔をして走り寄った。 「ウリエル、会いたかった。」 近寄った細い体を強引に引き寄せ、抱きしめる。 「ザック。ここは、基本的にオメガと王以外は立ち入り禁止なのですよ。何度言ったらわかるのですか。」 嘆息して言い聞かせるが、聞く耳など持つはずがない。王の末弟アイザックは、ウリエルの体を思うさま抱きしめ、首元の香りを吸い込んだ。 「ああ、俺のウリエル。お前がいないと俺は生きていけない。お前の体も、お前の心も、全てを手に入れるにはどうしたらいい。」 ふふ、と優しく笑って囁く。 「気付いているのでしょう?貴方が望むのなら。私の全ては、あなたのものに。」 細い指を頬に添える。アイザックの金色の髪に日の光が透ける。 王城の一角。楽園と呼ばれるオメガの園の片隅で、若い二人は熱く見つめ合った。
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