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「…タツカさん、なんでこいつがおるって教えてくれんかったんですか」
「ん?面白いものが見れるかな?と思いましてね。だって君、この子がいるって知ったら来なかったでしょ?」
「ええ。俺の部下に島に帰させとりました」
「それに本当はこんな事が起こりさえしなければ一生会うつもりなかったでしょ?」
「………」
「ッ!!お兄…ちゃん……」
「サセト中佐それって…どういう…?」
会うつもりはなかった。その一言にサセトは否定をせず、黙り込んでいる。
それだけじゃない。さっきの時も"サセトは死んだと聞かされただろ"と詩羽へ言った。
なぜ家族へその様に思わせたのか…そう思ったが自分も母とは会いたくなかった時期があった。それと同じようなものなのだろうか…とマリネは考えた。
一方の詩羽はそのタツカの質問に無言の肯定をされたことにショックを受けた。
"嘘はついていない"のだ。
自分達に一生会うつもりはなかったのだ。
あの優しかった兄が…そう思うと悲しくなってきて涙が止まらなくなった。
「し、詩羽ちゃん!?」
「しぃば……」
しっかりしているように見えてもまだ13歳の少女なのだ。
長らく会えなかった、死んでいると聞かされていた兄にやっと再会できたと言うのにそれを歓迎されなかったのだから泣きたくなるのも仕方ないことだ。
そんな詩羽をマリネは抱き寄せ大丈夫と背中をさする。
「泣かしちゃいましね」
「…タツカさん性格悪いですよ…。
マリネすまんが詩羽を頼む」
「え?中佐、何処に行くんですか?」
「詩羽か見つかったことを報告せんとあかんじゃろ。…あと、ちぃと頭冷やしてくる」
フフと笑うタツカにサセトは睨んだ後、チラリと未だ泣く詩羽を見て部屋を出て行く。
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