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「あー見えて相当君を心配してたんですよ?彼は」
「……」
「君が行方不明の連絡を受けた瞬間固まってたそうですよ。部下たちに指示が出せないくらいには衝撃を受けていたようですね」
「え?」
「会うつもりはないとは言ってるけど、人一倍家族を心配しとるんですよ。島にはいかないけど、ミヅメ…セトウチの海に住む私の同僚に逐一島の状況を聞いてるんですから」
サセトが出ていって彼の気配もなくなった事を確認したタツカがフフと笑い口を開く。
「彼は不器用な男ですよね」
「なぜ…中佐は家族と会いたくないって言ったんでしょうか…」
「単純な話ですよ、自分は変わってしまった。戦争で人を沢山殺しているから…家族に合わせる顔がないんだそうですよ」
「え…それだけ?」
「たったそれだけと感じましたか?あの子は根は…というか幼い頃から心優しい子でしたからねえ。そんな子が今や人を殺す戦争に身を置き、戦場じゃあ鬼神の如き敵を葬り東に名が知れ渡り、中佐という立場なんですから。人生何が起こるかわかりませんね。
そんな血にまみれた彼が無垢な妹二人に触れられると思いますか?」
「お兄ちゃん…」
「中佐…。…詩羽ちゃん、サセト中佐と話そう?
話さなきゃいけないよ」
「マリネさん…」
なぜサセトの幼い頃を知っているのか…そんな疑問をマリネは抱いたが、今はそんなことを言ってる場合ではない。
かつて自身も家族との問題でナカコクの皆に迷惑をかけ、そして前を向くことができた。
それなら今度は自分が何かできないか、とマリネは思ったのだ。
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