6ーギルドの依頼

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フードは、僕と他人の間にある壁だった。 その壁があると、何を言われても、たとえ文句を言われたとしても気にならない、ただ僕は自分の役目をこなすだけ、自分のすべきことをするだけ。 その生活の中に愛なんてない、人にどう思われてたって、僕にはどうでもいいことだ。 良い感情も悪い感情も、全ては景色の中に溶けていく。 だからマスターの言っていることが、僕には全く、理解できなかった。 「貴方は、感情の起伏が元々あまりないのだと思っていました。出会った時からその顔をフードで隠していた貴方は、自分の感情まで隠していたのですね。フードを取ったらこんなに表情豊かで、とても幼い子供。今まで気づいて上げられなくて、本当にごめんなさい」 僕を抱き寄せたマスターは、頭を撫でるのは止めず、苦しそうな声でそう呟く。 「貴方にはこれから補助を、つまり人と関わる仕事を主にしてもらいます。もちろん無理はさせません、必ず誰かと一緒に行動してもらいます。そこで、自分の価値を見直してください」 「……は、い」 訳がわからないけれど、マスターの思いが伝わって素直に僕は頷いた。 顔を見上げると優しく微笑まれて、彼は自分の保護者だったと思い出す。 今まで雇い主だと思っていた他人事な距離が、少し縮まった気がした。 親……親。彼は、自分の親。 何故か、その言葉がずっと頭に流れていて。 『保護者』という言葉を今、ようやく理解した気がした。
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