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僕がおろおろしていると、困らせていると分かったのだろう。
やっと頭を上げた彼は、それでも僕と目を合わせようとしなかった。
「そもそも、君は僕に失望してたんじゃ……」
もうあの頃のような力がないと分かったから、失望し避けていたのだと思っていた。
それは、違うの?
何度か視線を感じてたけど、僕が視線を向けるとすぐ逸らされたし……それで、もうダメなのだと思っていた。
僕とサリュの関係は修復不可能、切れた糸は直すことなど、困難だと思っていたのに……。
「いいえ、違うんです。勘違いさせてしまって、申し訳ありません。どう謝ろうかと考えているうちに視線がいってしまって、挙句気まずくてすぐ逸らしてしまって……感じ悪かったですね、反省しています」
どうやら、本当に避けようとして避けていたわけではないらしい。
憧れてルピナス隊に入隊したはずなのに、その憧れの力をもう持っていない僕を、失望せずに、こうして謝られている……。
ますます、この状況の意味が分からなくなっていく。
「俺、あの時アルディル君の表情から零帝様の顔になった時、ショックだったんです。アルディル君の時は表情があったのが、零帝様になると抜け落ちて、感情を全く読めない無表情になって。俺たちは、貴方様に話しかけても反応が薄いと言い訳して、一人がいいのだと勝手に勘違いして、貴方様の事を遠くから尊敬のまなざしで見守ってきました。けど、学校での貴方様を見て、それは違うのだと思いなおしたのです。学校では、貴方様は楽しそうでした。笑うことは滅多にないのですが、その目は輝いていて……それで、俺たちは大変な勘違いをしていたと思ったのです。一人が好きなのではなく、口数が少ないだけだった。零帝様の無表情を、俺たちが作ってしまった。それについて、ルピナス隊を代表して、謝らせてください。本当に、すみませんでした」
彼は再度、頭を下げた。
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