1662人が本棚に入れています
本棚に追加
「そ、そんな、零帝様相手にため口だなんて、恐れ多い……!!」
「ですがサリュ、貴方は私と二人きりの時にため口で話さないと、すぐに敬語が出てしまいそうですが……」
「気を付けます!それに、もし零帝様と接しているときに隊のメンバーと接触してため口を聞かれたら、俺が殺されてしまいます!」
必死に懇願するサリュに、あの人たちなら確かに一発殴るかくらいはあるかもしれないと思い、簡単に想像できるそれに苦笑いを浮かべた。
僕の隊のメンバーは妄信的とも言えるほど僕の事を信頼していたし、それを視線で感じ取っていた。
だからサリュの言い分にも、一理ある。
「では、学校ではちゃんと他の人と同じように接してくださいね?呼び捨てもですよ?」
「……はい。わかりました」
苦虫を嚙み潰したような顔をしているが、ようやく納得してくれたサリュに笑顔を浮かべた。
嫌われるのはやっぱり辛い、好かれていた時期があるのなら、その感情はもっと顕著に実感される。
だから嫌われてなくて良かった、もう避けられることはないのだと安心して、気が付いたらそんな表情を浮かべていた。
それを見たサリュは僅かに目を見開いて、そして柔らかく笑む。
「貴方様がそうやって笑える環境、それが今まで、足りないものだったのですね。ですが今、プライベートで笑顔を浮かべることができるのなら、安心致しました。
……けれど俺は……いつか、仕事での貴方様でも、笑顔を見てみたいです」
サリュの髪が揺れ、初夏の暑くなってきた風が、僕らの間をそっと駆ける。
最初のコメントを投稿しよう!