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零帝としているときは笑顔どころか、表情も滅多に動かさなかった。
だからきっと、また隊のメンバーと対峙するときがあったとしても、僕はその態度を崩さないだろう。
そんな僕が、笑顔を浮かべる事なんて……。
「……っつ……そういうところが、無自覚天然たらしと言われるのですよ。男の私まで、誑し込まないでください」
「え?……タラシ?」
照れくさくなったのを誤魔化しそう言えば、本当に何のことか分かっていなかったらしいサリュは、キョトンと首を傾げた。
「ですが、そうですね……もう少し、隊のメンバーとも歩み寄れるよう努力は、してみたいと思います」
「そうですか。ではささやかながら、俺に出来ることがあったら言ってください。俺も貴方様の、隊のメンバーの一員なので」
「ええ、その時はよろしくお願いしますね」
閉じこもっていたのは僕だけで、歩み寄ろうと思えばきっとあのメンバーなら受け入れてくれただろう。
それをしなかったのは僕であり、またその必要もないと思っていた。
けれど、今は……本当の自分でいつか話せる時が来たらなと、そう思う。
それもこれも、僕がこの学園に通わなければ、思わなかった事柄で――。
《零帝。今すぐ、ギルドマスター室に来てください。話があります》
改めてこの学園に通いだしてから感じている自分の変化を思っていたら、急に念話でマスターから呼び出しを受けた。
《今すぐ、ですか?》
《はい。大丈夫ですか?》
《わかりました、すぐに向かいます》
《ギルドマスター室に、直接転移して構いませんので。では、また》
そう言って、念話は切られる。
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