1662人が本棚に入れています
本棚に追加
悲しそうな表情で、不安げに瞳を揺らしている。
「大丈夫ですよ、マスター。私はもう、ただの無表情ではありませんから」
きっとマスターは、僕がフード越しに感情をシャットアウトしてきたのを感じているのだろう。
今までの僕、零帝は〝無〟の表情だった。
けれどこれからの僕は、周りにある出来事を拒絶するのではなく、受け入れていきたい。
彼らの感情と、直接向き合う。
だからマスター、そんな悲しそうな顔をしないでよ。
そんな意思を込めた視線を向けると、マスターは僕の決意を感じ取ったのか、力強く頷いてくれた。
「では、行きましょうか」
「ええ」
マスターの言葉に頷き、収納ボックスの奥深くに眠っていた真紅のマントを取り出す。
それは僕が零帝でいる証、顔も声も晒していない僕が、唯一零帝たらしめるもの。
もう着ることは無いのだと思って奥深くに仕舞っていたそれを、こうして再び羽織る日が来ようとは。
感慨深く思いながらも、ドアを開け待ってくれているマスターの後に続いた。
帝の元へ、会議室へ。
早足気味に、僕らは向かった。
「失礼します」
三回ノックをして、マスターが『会議室』とプレートの掲げられているそこに入っていく。
僕も続いて入っていくと、帝の全員が立ち上がり、僕に向かって頭を下げた。
僕が前にある椅子に座ると、皆も席につく。
最初に口を開いたのは、水帝だった。
最初のコメントを投稿しよう!