1662人が本棚に入れています
本棚に追加
優しい皆が、心を痛めないように。
「そんな……」
「けれど現在、貴方様の代わりを務められる人はいません。零帝の条件となるのは、全属性の保持者であること。後継者探しは、私より大変だと思いますが」
土帝は、現在後継者探しに奔走していた。
年により体が全盛期より動かせなくなっているので、後継者を見つけたら色々教えこみ、退職するつもりらしい。
その彼でさえ難航を極めている後継者探しを、全属性を保持している事すら珍しいのに、加えて強さまで有しているという条件で探すのは奇跡に近いだろう。
けれど探さなければ、零帝の席を空席にすることになってしまう。
零帝という名は、いわゆる象徴的な存在の意味もあるのだ。
魔界にその名を知らしめ、踏み込んだ攻撃をさせないようにしている。
だから僕が退職するとしても、代わりの人物を立ててけん制しなければ、魔界はすぐさま攻撃を開始するだろう。
だからそうならないためにも、後継者を探さなければならない。
「そういえば、マスターの新しい養子は、全属性保有者と言ってませんでした?」
何やら顎に手を当てて考えていたようだった炎帝が、ふいに顔を上げてそう言った。
一瞬体がビクリとなりそうなのを何とかこらえ、視線の集まったマスターの方を向く。
「はい。そうですが」
「じゃあその子を新しい零帝候補として立てるのは?」
「彼はまだ学生、それに零帝としての魔力量も足りていません。相応しいとは、思えませんが」
チラリとマスターが意地悪そうな笑みと瞳を僕に向けてきた。
最初のコメントを投稿しよう!