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確かに考えてみると、こうしてマスターの前で気を抜いたことなんてなかったし、なんならプライベートで家に帰ってからもすぐに寝るだけで、こうしてだらけたことなどあまりなかったかもしれない。
「すみません、お見苦しい所を」
「嬉しいと言っているのですよ?そのままソファで寝てもいいですからね」
慌てて姿勢を正そうとした僕を止め、マスターは対面のソファに座った。
入れてくれたお茶を口に含み、一息つく。
ゆったりと流れる、平和な時間。
さっきまでの緊迫とした空気との違いに、やはり僕はだらりと体勢を崩した。
「マスター。お耳に入れたいことがあるのですが」
「何です?」
暫くそのままでいたあと、マスターに話さなければいけないことがあったと思い、僕は再度姿勢を正した。
「僕が魔法を掛けられた相手、覚えていますか?」
「はい。確か、魔人だと」
「その魔人が、今学園にいるのです」
「……!?」
目を見開いたマスターは、息をのんだ。
口に手を当て、目を飛び出るんじゃないかってくらいまん丸と開く。
そして僕は、授業中に会ったジークと、そして授業後に接触を図ったこと、ギルドの依頼を一緒に受けたことを話した。
「そうですか……あの、少年が……」
僕らの後ろからそっとついてきていたジークを思い浮かべているのだろう。
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