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そしてやってきた、週末。
「ようこそいらっしゃいました」
荘厳な門を抜けた先、案内の元何十メートルと歩かされた先にある扉を開けると、使用人と共に王女が待っていた。
「さあ、こちらへどうぞ」
どうやら王女自身が案内してくれるらしく、足取りしっかりと歩いていく。
それに僕も一歩下がってついていき、ちらりと周りを見渡した。
零帝とはいっても王宮まで来ることは稀で、片手で足りるほどしか行ったことなどない。
高級感漂うシルクの壁に、著名な絵画、部屋を照らす魔具をふんだんに使い、常に照らされている廊下。
だだっ広いそこを進み、向かう先は本物の王子の眠る部屋。
そう。今日は、王子の様子を見に王宮にやってきたのだ。
昏睡状態となっている王子の、状態を探るために。
「こちらです」
大きな部屋の扉の前に立ち、王女は一旦背後にいる僕を振り返った。
頷く僕を見て、コンコンとノックする。
「具合はどうです?」
「依然、変わりありません」
「そうですか」
若干の落胆を滲ませた王女が、そっと天蓋付きのベッドに近づき、僕もそれについていく。
「兄の、ルーク・シグスト・ラ・イスリーヌです」
王女に促され、僕は眠っている王子に近づいた。
王子と瓜二つながら精悍な顔立ちは男であり、やはり本物の王子は王女より男っぽかった。
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