8-王宮にて

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所々ついている魔道具は、生命維持のものだろう。 常時医師が付き添い、王子の容態を管理しているのだ。 今ついていた医師は、「何かあったらお呼びください」と部屋から出て行った。 それを確認し、王女を伺い見て、僕は王子にそっと触れる。 心魔法を使い、王子の状態を確認した。 「やはり……」 そして、王子の心を中心に体全体の様子も見て、確信する。 「心が、完全に支配されています」 王子は僕と同じように、心が完全に凍結されていた。 これでは、何も考えることも意思を持つこともできやしない。 辛うじて、人が意識関係なく行っていることができるくらいか。 王子でなかったら、間違いなく亡くなっていただろう。 「そうですか。ではやはりこの事態は魔人によるもの、これは魔界からの宣戦布告と考えてよろしいのでしょうか?」 「そうですね、だと思います」 国の第一王子を動けなくさせたのだ、それもこれは死んでいるも同然である。 僕も危うかったのだし、これで宣戦布告でないというのなら、何が宣戦布告となるのか。 ジークの顔を頭の隅に思い浮かべながら、僕は王女をじっと見つめた。 「何を仕掛けてくるのか分からない、何が来ても良いように、各国で話し合いを持った方がいいでしょう」 魔人からの宣戦布告、それは魔界との全面戦争を意味していた。 そうなるとイスリーヌ国だけの問題ではなく、この国があるマーキュリー大陸、それからユラナス大陸やピスケス大陸といった人間国だけではなく、エルフの住んでいるグルス大陸、種族混合のキグナス大陸、それから獣人の住まうプルート大陸などにも協力を仰ぐ必要があるかもしれない。
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