8-王宮にて

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準備期間は、僕の支配度によるだろうか。 きっと、僕が完全に使い物にならなくなった時点で、魔界は仕掛けてくるのだろう。 残り期間は、あと数か月。 その間に魔界に対応できるだけの戦力を、用意しなければ。 「分かりました。父に、そう伝えておきます」 王女の父親、つまりはこの国の王にきちんと伝えてくれるという王女に、「よろしくお願いします」と言って、僕は王子に掛けた魔法を解いた。 そして、ポケットからあるものを取り出す。 「これを」 「何です?これは」 それは、一見ただの指輪。 だが、これには僕の魔法が掛けてあった。 「これには、最上級魔法が掛けられています。心の中に住まう闇を一瞬取り除き、浄化する、心属性と聖属性の混合魔法です」 それを聞いた王女は、目を見開く。 これはまさしく、僕らに掛けられている魔法を払拭するためのものだと思ったからだろう。 けれど残念、これには欠点があるのだ。 「この魔法は、強靭な精神の持ち主でないと、またすぐに闇に取り込まれる魔法です。取り除かれた闇は消えたわけではなく、次の瞬間には勢いをつけて襲ってきます。意識を取り戻すのは一瞬ですが、その一瞬で闇をバリアする魔法……それを今、開発しているのです」 闇に既に支配されている僕らは、これ以上の闇と立ち向かうだけの精神を持ち合わせていない。 なのですぐに、また再びの闇の世界へと足を踏み入れることになるだろう。
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