1662人が本棚に入れています
本棚に追加
『彼は……以前、マスターが言っていた、研究者のレオ・オルグオです。今日貴方が王宮に来るということで、ついでに来てもらいました』
困ったようにレオと呼ばれた男を見ながら、王女は何故彼がここにいるのか説明する。
以前、マスターと王女に僕の身に何が起こったのか説明した際、レオという研究者に見てもらうという話をしていたことを思い出した。
どうやら、そのマスターが言っていたレオが、目の前にいるこの男らしい。
軽そうに見えて口は堅いと言われていたが、確かに言動は軽く、自己中心的な気がした。
今まで、周りにいなかったタイプだ。
研究者は個性的な人が多いと聞いたことがあるが、その噂は本当だったのか。
『ああ、箸が止まっているじゃないか。私の事は気にせずに、食べたまえ。そして、早く話を聞かせておくれ』
早く食べろ、なんて言いながら、レオは僕の横にしゃがみこんで僕の様子を観察し始めた。
おいしいはずの料理も、こうも見られていれば味を感じるわけもなく、ただ淡々と箸を動かし、口の中に入れるという作業をすることで食事は終わってしまった。
「終わったかい?じゃあ、来たまえ。こっちだ」
そしてレオは僕の手を引いて、勝手知ったるという風に歩いていく。
何度か角を曲がり、くねくねと王宮を進んだところで、ようやくレオは一つのドアを開けた。
そこはどうやら談話室のようで、ソファが対面に設けられており、そのままそこに僕らは座る。
王女も向かいに座り、メイドがすぐにお茶を用意してくれた。
最初のコメントを投稿しよう!