8-王宮にて

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それには僕の強さは必須条件となり、物心つく前から、僕はその男によって訓練に奔走していた。 最低な男だったとはいえ、僕にはこの男からの食事でしか生きる術はなく、必死に訓練して、いつしか冒険者として男についていくようになり、男が死んだ後でも冒険者として必死に生きてきた。 僕は生きるために、この実力を手に入れたのだ。 だから明確に何の為にという頑張る対象はなく、強いて言うなら自分の為に頑張ってきた。 そして僕のそんな答えを聞いて、「フム」とレオは顎に手をやった。 「生きるため、か……それには努力もだが、才能も必要だろうね。全属性と魔力量などの才能をもって、ものすごい勢いで君は成長した。 では、もう一つ聞こう。 君はその力を、取り戻したいか?」 必死になって、得た力。 それは僕を、孤独へと導いた。 あの頃はそんな事思いもしなかったけど、こうしてフードを取って人と関わるようになって比べると、分かる。 あの頃、毎日毎日、僕は同じことを繰り返していた。 訓練して、魔物を退治して、隊員を鍛えて。 自分で作った壁に、孤独を孤独とも感じず、ただただ僕は一人だった。 それは零帝という地位のせい。 そしてその地位まで上り詰めることとなった実力を、取り戻したいか。
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