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最初から最後まで自分を貫くレオが去り、王女が僕の隣に移動する。
「髪、乱れてますよ?」
レオにより乱された髪を両手を使って直し、優しい手つきで王女が僕の髪に触れた。
撫でつけるようにそっと触られるが、一部ぴょんと跳ねているのか、そこを何度も押さえつけられる。
「……中々、直りませんね」
僕は結構癖っ毛な方なので、一度跳ねると水を少しつけたりなどしないと直らない。
なので王女が懸命に直そうとしているのを見て、少し申し訳なく思ってきた。
「もう、大丈夫ですよ?すみません、苦労をおかけして」
「……こちらこそすみません、お役に立てず」
手を離した王女を見るために、少し視線をあげた。
すると、王女もこちらを見て、その距離の近さに顔が途端に熱くなるのを感じた。
「す、すみません、こんなに近づいてしまって……っ」
「い、いいえ、僕こそその……すみません」
互いから視線を逸らし、緊迫とした空間が辺りに漂う。
普段王子としていても、彼女は王女であり、女性である。
学校では男だとか女だとか気にせずに接していたが、今の距離感は女だと実感させられる距離だった。
気まずい空気が嫌で何か話しかけようと戸惑っていると、それは王女も同じだったのか、「そういえば」と切り出してきた。
「聞きました、指名依頼をお受けすると」
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