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「え……」
朝起きて、学校の裏にある森にて体を動かし、朝食に出かけようとしていた時だった。
「嘘、でしょ……こんな時に……」
パキンという音と共に、耳についていたイヤリングが床へと落ちる。
途端に、抑え込まれていた魔力が溢れ出そうとした。
「今日、炎帝も来るっていうのに……」
それは、封具。
僕の魔力を抑え込んでいたもの。
そして今日は、皆が心待ちにしていた、新入生歓迎会。
以前マスターに壊れそうだと指摘されていたが、今の今まで放置していたそれが、今日遂にその役目を果たしてしまったらしい。
「何も、今日じゃなくてもいいじゃん……」
普段なら魔力を使う授業はサボればいいし、少しの時間なら誤魔化せる。
だが、今日は少しの時間じゃ終わらせられないし、少なくても一試合はしなくてはならない。
魔力を抑えつつの一試合……今から考えるだけでも、頭が痛くなってくる。
「いっそ……すぐに、負ける?」
それもいいかもしれない。
そしたら一試合だけだし、早々に負けてしまえばあとは観戦するだけだし。
「うん」
そうと決まれば、とりあえずはこのことをマスターに報告しよう。
もしかしたら、試合までに封具が間に合うかもしれないし。
そう思い、耳に手を当て、僕はマスターに念話した。
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