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「行こうぜ!」
フレイがいつも通り元気いっぱいに僕の手を引き、皆が集まっている掲示板の前に出た。
そこに張り出されているのは、今日の試合の相手。
どうやら三チームに分かれてするらしい試合は、僕がAチーム、そしてフレイがCチームだった。
各チームの優勝者が、最後の試合に進むことができるというもの。
そして、僕の最初の試合相手は……。
「アルディル・アマルド」
呼ばれ、振り向く。
そこには、仁王立ちで立っている、キーシィスの姿が。
新歓に出る僕らが集まったことにより、周りが察したのか、さっと僕らを中心に輪ができた。
「俺は、絶対に勝つ。お前にだけは……負けない」
それだけ言ったキーシィスは、後ろを向いてこの場を去った。
周りが騒然となる中、僕はそっとため息をつく。
そう、僕の最初の試合相手、それはキーシィスだった。
あの授業の日以来話しかけてはこなかったものの、いつも睨んできていて、目の敵にされていた。
それもそうだろう、皆の前で吹き飛ばされ気絶するという辱めに合わされたのだ。
何か言われたりされたりするよりましだ、だって視線だけなのだから。
だが今日は……遂に、この試合で、僕に勝つと宣言した。
僕に勝つことで、あの授業の日の記憶をすり替える、そのつもりなのだろう。
貴族としてのプライドにかけても、何があっても勝つつもりなのだろう。
「お互い頑張ろうな、アル!」
「……うん、そうだね」
やる気満々なフレイの隣で、僕はただただ憂鬱だった。
キーシィスとの試合……どう、負けようか。
その考えで、僕の頭は一杯だったのだ。
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