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そしてアルディル達が、掲示板を確認していた頃。
一時的に帰宅していたテルは、リビングでテルとミリーの朝食の準備をしていた母の背に向かって、問いかけた。
「母さん、今日……覚えてる?」
「もちろん、今日は新歓よね。頑張ってね、テル」
「そうじゃないよ。アルディと会う日だって……もちろん、覚えてるよね?」
「まだ言ってるの?アルディは死んだの、そんな子は最初からこの家にはいなかった。いい加減、あの子の事は忘れなさい」
「そうじゃないって!生きてたんだよ、生きててくれたんだ!何で何度言っても信じてくれないんだよ!!」
「貴方こそ、何を言ってるの?あれから何年経ってるというの、貴方たちが必死に探しても見つからなかった、今更見つかるだなんて、そんな事……きっと、都合の良い思い込みだわ」
そう言って決めつけた母親は、この話は終わったとでもいうように背を向け朝食を運び出した。
それを見てテルは、悔しそうに唇を噛む。
自分の子供を捨てたくせに、向き合わないで、見つけたと言っても信じずに、逃げて逃げて、最低で、愚かな自分の母親。
本当は、会わせたくなんてない。
きっと会わせたところで、この母親は酷い態度を取るだけだろう。
けれど、テルやミリーに向ける愛情は本物で。
アルディを捨てたという事が枷になり、歪な形をしている家族を、正常に戻したくて。
自分の子供を愛したいくせに愛せない弱い母親を許せない気持ちもある、だが皆が揃って笑い合える日々を、テルはずっと夢見てきた。
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