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結局封具は間に合わず、僕は今、必死に自分の魔力を抑えていた。
会場となっている闘技場に立つと、キーシィスが僕を睨みつける。
「では、キーシィスvsアルディルの試合を始める。勝敗は負けを認めるか、相手を気絶させるかで決まる。魔法でも剣でも何でもアリの試合だが、相手を殺すようなことは無いように。では始める。よーい、スタート!」
先生が小さな火を空で爆発させ、と同時にキーシィスが動き出した。
「我らの周りにある空気よ。
温度を下げ、今、氷として目の前に具現せよ!
小さな氷は風と混ざり、冷風と氷の嵐となれ!」
キーシィスが始まると同時に魔法を放つ。
それは風属性中級魔法、〝冷たい嵐〟。
水属性を持ってない人でも、水とならないまでも水蒸気くらいなら操ることができる。
それを利用したこの魔法は、空気に混じっている水蒸気を氷として具現させ、まさしく冷たい氷混じりの風を相手に送るというもの。
それも、術者の力量によってこの魔法は吹雪かというほどまでに強くすることができる。
水属性を持っていたなら、大量の水を氷と雪にして相手に浴びせることができ、広範囲に効果を期待できるこれを、僕もちょこちょこと利用したものだ。
久しぶりに見る魔法に懐かしくなり感慨にふけっていたら、もう目の前にその魔法は迫っていた。
風は一瞬で移動することができる最も素早い魔法、そしてその一瞬の行動が命取りになる。
一年生で使えないことが普通である中級魔法を使用したということは、この日に備えて相当な練習をしたのだろう。
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