9-新歓

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積み重ねた練習に報いここで負けてしまってもよかったのだが……。 「…………」 ちらりと、王子を見る。 避けようとしない僕を見て、王子の瞳が鋭くなるのが分かった。 実は王子には、僕の封具が壊れたことは、この試合が始まる前に言っていた。 もちろん、負けようと思っている、とも。 だが、王子に言われたのだ。 相応に検討したうえでの負けでないと、キーシィスにも失礼ではないか、と。 僕を目の敵にしていると一瞬で分かるキーシィスに分かるように負けてしまえば、そりゃ相手にも失礼だし、これ以上キーシィスの態度がひどくなる場合も考えられる。 なのでここは上手く魔法を躱し、キーシィスの背後に回ることにした。 まだ使い慣れていないのか不安定な魔法を腰を屈め避け、キーシィスの背後に移動する。 嵐の渦に捕らわれたと思われた僕が急にいなくなったからだろう。 ハッとなった彼は、反射なのかぎりぎりで僕の剣に対応した。 「……っ」 右手で右に左にとキーシィスの剣に打ち込んでいる間に、左手では魔法の準備をする。 「おい、あいつまさか、無詠唱、か……?」 「マジか。滅多にできないと言われているのに」 そんな周りの声を無視して、魔法を放つ。 今、僕は魔法の制御に必死で、とてもじゃないが詠唱する心の余裕がなかった。
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