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詠唱は魔法を援助することができる、けれど口に出すことでその魔法のイメージを明確にするのだが、些細な微調整ができないのだ。
今詠唱したら調整を間違ってしまう、もうあんな授業の失態はしたくない。
だから多少は目立っても、無詠唱で調整をしつつ、魔法を放った。
そして放つと同時に、キーシィスから距離を置く。
彼の周りには小さな竜巻がいくつも出現し、四方八方から強い風を浴びていた。
それは風属性中級魔法、〝小さな悪戯〟。
どうせ実力の一旦はあの授業の日に見せてしまっている。
今更初級魔法しかできないと言っても、信じてもらえないだろう。
だから中級魔法には中級魔法を、そして切りのいい所で切り上げる。
キーシィスが吹き飛ばせるであろうギリギリを狙って調整されたその魔法は、案の定吹き飛ばされた。
そして仕返しとばかりに風を足にまとわせ瞬時に移動したキーシィスは、僕の背後に回り上から切りつけるが、振り返りざま僕はそれを受ける。
距離を離したキーシィスは、助走をつけ僕に襲い掛かった。
交差しあう剣の中で、僕の耳に近づいたキーシィスは静かに僕を睨みつけてきた。
「……手加減、してるだろ」
剣をギリギリと触れ合わせ、力比べをしている手の力はそのままに、僕は目を見開いた。
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