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まだ赤が残る顔を前に向けて、必死に平静を装う。
そしてそんな僕らの様子を密かに見ている人が、二人。
△▽
「意外だわ。貴方がまさか、自分から負けを認めるだなんて」
「それほどアルディルが強敵だったんだ。あれはきっとクラスの誰よりも、もしかしたら先輩と比べてもトップに普通に入ってしまうかもしれないほどにはな」
「そんなに?それじゃあ、私が選ばれなかったのも納得ね」
外に出ていたキーシィスは、王子とアルディルが闘技場に戻っていくのを見て、木の陰に隠れた。
見つからないように数秒息をひそめ、そしてシニーが先ほどの光景について言及する。
きっと、今頃キーシィスとアルディルの試合の話でどこも盛り上がっている事だろう。
新歓は先輩と当たることもあるとはいえ、大抵は相手側の気絶で幕は閉じる。
その学年のトップが戦う新歓において、負けず嫌いな彼らが負けを認めることはほとんどなく、冒険者を目指している者が大抵のこの学園では、負けはイコール死を意味するのだ。
よって皆が驚いているキーシィスの行動は当然シニーも驚くところがあり、シニーの中でアルディルの実力は相当高いということになっていた。
薄い唇の口角を僅かに上げ、去っていったアルディルがいたであろう方向を見やる。
「何だか、面白そうね」
ひっそりと、シニーはそう呟いた。
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