9-新歓

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目くらまし程度の魔法を放った後、相手の背後に回り込もうとしたフレイの足を止めたのは、フレイの詠唱時に準備されていた魔法だった。 相手は二年のSクラス特待生の女性で、どうやら特殊属性の持ち主のようだった。 固有属性と特殊属性は、火や風といった普通魔法に属さない魔法である。 どちらも持っていることは珍しいとされているのだが、フレイの持っている固有属性は、特殊属性のように何人も同じものを持っている人がいるわけではなく、個人個人が保有しているものなので、とても稀少とされている。 同じ属性を持っている人も中にはいるかもしれないが、いたとしても二人、一生で一度出会わない確率の方が圧倒的に多い、そんな属性なのだ。 そんな珍しい特殊属性と固有属性の勝負は興味を惹かれ、会場はとても白熱していた。 「木よ! 根を張り伸ばし、範囲を広げ、太陽の光の下すくすくと育ち給え! 蔦は相手に巻き付き、葉は視界を奪い、幹は成長の礎とならん! さあ、育て、育て、天を目指さん!」 緑魔法は、土さえあればどこからでも木を出すことができる。 蔦がフレイの手足を狙い、幹は足元を危うくし、葉や枝は飛び上がることを阻止する。 だがフレイが今使えるのは火の魔法、固有属性により使えるようになったそれを巧みに操り、フレイも邪魔してくる蔦や葉などを燃やし、相手に近づいていく。 けれどさすがは二年生、緑魔法を使いこなしている彼女はフレイの足を遅くさせ、中々フレイは近づけないようだった。
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