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ミリーとは休日遊べないことが結構あって、ミリーを除いた3人で遊ぶことが多かったのだ。
そんな相手が、やっと見つかって。
待ち望んでいた人が、目の前にいて。
言い表しようのない感情を抱え、今までの困難を思い出し。
2人の間にはまた踏み込めないような空気が発されていて、気持ちを共有し、薄っすらと涙を浮かべているのが見て取れた。
(これは、兄弟だけにした方がいいな)
そう思い、声を掛ける。
「じゃあ、帰るか!」
森を抜けるまでの間は皆口を閉じ、落ちている葉や枝を踏む音だけが響き渡った。
アルディルは起きる様子はなく、浮かんでいる隈からまだまだ起きないだろうと予測する。
その顔は普段のしかめっ面が想像もできないほど穏やかで、子供じみていた。
安心しきった顔。
涙の跡は、もう乾いている。
(本当に、子供だな)
彼は今まで、子供ではいられなかったのではないかと、フレイは考えていた。
学校に行ったことがないだろう彼は、大人として扱われていたのか、もしかしたら酷い仕打ちを受けていたかも知れない。
虐げられ、侮蔑されてきたのかも知れない。
けれど、だからこそ今、彼は子供の顔をしているのだろう。
それは、微かにでも自分たちに心を許してくれたという証拠。
話しかけても無視され続けた成果としては、十分にお釣りがくるだろう。
だから、今はこれだけでいい。
これから3年、時間があるのだから。
「じゃあ、ここで」
「はい!じゃあな、ミリー」
「じゃあね、フレイ、リア、フィー、サリュ。また明日!」
寮内にある、各階へと繋がる転移魔法陣を前にして、別れの言葉を口にする。
「じゃあ、俺たちも行くか」
「ええ」
それを見送った後、フレイ等も己の階へと向かうため、転移魔法陣へと手をかけた。
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