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サリュは1人、長い廊下を歩いていた。
喧騒とした空間を離れ、静寂の中、白と黒で綺麗に模様付けされた壁を見やり、足を動かす。
そうして辿り着いた部屋の前に立ち、3回ノックをする。
「ギルドマスター、サリュです。入ってもよろしいでしょうか」
「はい、どうぞ」
失礼します、という声とともにドアノブに手をかけ、中に押し入る。
いつもの如く大量に書類に囲まれているギルドマスターは、サリュの姿を見ると立ち上がり、ソファーに身を移した。
サリュもその向かいに腰を下ろし、口を開く。
「ギルドマスター、ーー」
「ーー見つけたのですね?」
サリュの声を遮り、ギルドマスターは声を重ねた。
「……はい」
神妙な面持ちで、サリュは答える。
正直、サリュは迷っていた。
この話を、ギルドマスターに報告するのを。
彼の、これまでの態度と抱えているであろう事情を考慮し、黙っている方が得策ではとも思った。
しかし、それでは私情を、己の感情を任務に挟んだことになってしまう。
それは最強の隊、ルピナス隊の行動としてしてはいけない。
そう判断を下し、意を決してサリュは口を開いた。
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