嘘吐きロゼの願いごと

13/15

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「碧鱗は、二度願いを叶えてくれたということか?」  言い伝えでは、碧鱗が叶えてくれる願いごとはたった一つ。それが叶うと以後数百年は力を蓄えるため、普通の宝石と化してしまうと言われている。 「違うわ。私が碧鱗に願ったのは『カイが心の底からの願いを口にした時、それを叶えてあげて下さい』っていう願いごとなの」 「俺が心の底から願った? ……ッ!」  カイが願ったことと言えば、ただ一つ。 『俺は、ロゼを失いたくないんだよ!』  カイは、自分が高らかに告げた告白を思い出して頭を抱えた。 (まさか、あの告白が碧鱗への願いごとになるなんて)  しかし今の状況を考えれば、全て納得はいく。突然、人外の力で窮地から脱したこと、それに―――ロゼがなかなか願いを口にしなかったことも、だ。 「どうして、そんな願いごとを?」 「だって、カイはいつも私のことばかりで、自分のことを後回しにするんだもん。だから、どうしてもカイの願いを叶えてあげたくて」  ロゼの優しさに心が温かくなる。彼女は昔からそうだった。奔放でお転婆で、どうにも手が付けられないのに、いつも最後にはカイを一番に考える。     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加