嘘吐きロゼの願いごと

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 カイはロゼ曰く『笑顔でいれば、軽く十人は口説ける』らしい顔を顰めて、深い溜息を吐いた。 「何よ、その目は。あ、分かった。私が重いとか思ってるんでしょう。フンだ、どうせ私はデブですよぉだ」 「誰もそんなことは言ってない。逆にロゼは少し痩せすぎだ。冒険家なんだから、もう少し食べて筋肉をつけろ」  カイが片手で引き上げただけで軽く持ち上がるロゼは、華奢で筋肉量も少ない。正直、国中に点在する古城や遺跡を回り、宝を探す冒険家としては心許ないというのが本音だ。 「何よ、カイは乙女心が分からないんだから。そういうこと言ってると、コレあげないわよ」  ロゼは膝丈のスカートについた砂埃を払いならが、手に持っていた赤い石をこちらに見せてくる。 「それは淑女の紅玉? その大きさだと推定売価は三百ルプ。一ヶ月分の冒険費になるな。でも、そんなものいつの間に?」 「穴の中で見つけたの。凄い収穫でしょう?」  フフンと鼻を鳴らしたロゼが、誇らしげな顔で見せびらかせてくる。それを見てカイは、嬉しいのか困ったのか分からない顔をした。     
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