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ロゼを宿屋に押し込めたカイは、一人酒場に来ていた。
この国では十六歳で成人と見なされるため、カイが酒場に入っても咎められることはない。が、入ってすぐに酒を頼んでみたものの、なかなか口がつかなかった。
(少し、大人気がなかったな……)
ロゼに怒鳴るなんて、自分もまだまだ未熟だ。どうしてもっと優しく諭してやることが出来なかったのだろう。
何よりも大切なのに。
溜息を吐く度に、後悔ばかりが生まれてくる。やるせない気持ちになったカイは、腰袋から古い御守りを取り出した。
布のいたるところが汚れ、端々の糸も解れてしまっているこの御守りは、ロゼが作ってくれたものだ。
あれは六歳の頃。カイが、「将来冒険家になるために、明日から修行をはじめる」と一大決心をした時のことだ。それを聞いたロゼは「じゃあ、私もカイについていくから、明日から一緒に修行する」と言って、この御守りを作ってくれた。
冒険家になるための厳しい修行で、カイが怪我をしないようにと。
(そう、俺はこの御守りを貰った日から、ロゼだけは必ず守りぬくと誓ったんだ)
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