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毎晩葬式のように暗い雰囲気で三人で食事をしながら、囚人が脱獄を計画するように、どうすれば家から出られるか、そればかり考えた。家から、両親から、正当に逃げる手段としてわたしは県外の大学へ進学した。
大学を出たら実家に戻り、就職して家計を助けると約束して。
「そんなことないよ絶対」
数人のレジ打ちを終え、思い出したように美濃くんが言って、それがさっきの話の続きだと気づきわたしは鼻で笑った。
バイトを終え、一緒にコンビニを出て、アパートまで送ってもらい、手を振る。
美濃くんが背を向け立ち去ったのを確認してから、アパートの外階段を登りかけて振り向くと、去ったはずの美濃くんがいた。
「どうしたの?」
訊くと美濃くんは、さっきバイバイした場所でわたしを追い払う仕草をした。行って、と口だけ動かしている。わたしが家の中に入るのを見届けようとしているんだとわかった。
うん、とうなずきもう一度手を振ってから、階段を登り終え玄関の鍵をあけて、振り返らずに中に入った。ドアを閉めてから「やさしい子」と思わず呟いた。
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